人間は誰しも、自分の物語を作りながら生きています。そうでなければ、生きてゆけないのです。
現在2年生が取り組んでいる文章(小川洋子「なぜ物語が必要なのか」)に登場する一説です。
この文章では、困難の多い人生を乗り越えるために「物語」を作る人物と、それを読むことで作者の思いに触れる読者が登場します。
そこで、授業でもそうした作者の思いに触れる過程を実際に体験することを目指し、ある活動をしました。
読み解くのは「短歌の連作」。
作品名や作者を明かさず、作品だけを読み、作者がどのような困難を抱き、創作によって何を得ようとしたのかを模索しました。
作者の人物像のヒントを作品から探し、そこから作者の人生を想像します。
このクラスがピックアップした歌は、以下の通り。
毎日の雑務の果てに思うのは「もっと勉強すればよかった」
青空の下でミネラルウォーターの箱をひたすら積み上げている
作業室にてふたりなり 仕事とは関係のない話がしたい
仕事、勉強、恋……自分たちの生活と照らし合わせて想像を広げる生徒たち。
「勉強は大変だもんね」
「同じことを繰り返す生活は退屈だよ」
「恋をしている。相手はどんな人なんだろう」
そんななか、一人の生徒がとある一首に着目します。
ヘッドホンしているだけの人生で終わりたくない 何か変えたい
「ヘッドホンしているだけの人生」とはどんな人生でしょう。
ここから議論はさらに白熱します。
「この人が抱いているコンプレックスは何か」
「なぜ作者は過去に勉強に励むことができなかったのか」
「作者は未来をどのような眼差しで見つめているのか」
一首を手がかりに、想像を深める生徒たち。
一定の結論が出たところで、作品名と作者が明かされます。
萩原慎一郎『歌集 滑走路』(角川書店)
最後に、本書に納められている作者によるあとがきと、作者の両親によるコメントを読み合わせました。
作者の思いとはなんだったのか、作者にとって創作とはどのようなものだったのか。
興味のある方は是非、一読をおすすめします。
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